54万件のいじめ

2019年10月25日 09時00分

 少しだけお時間よろしいでしょうか―。街頭でそう呼び止められ、アンケートへの協力を頼まれた経験のある人も多いのでないか。このアンケートだが、用意された回答の選択肢によって結果に違いの出ることが知られている

 ▼例えばある質問に対し「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択と「賛成」「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」「反対」の4択があったときに、4択の方が意見は割れる。つまり質問を工夫し周到に練られた回答項目を用意すれば、アンケートする側に都合の良い結果に誘導できるというわけ。文部科学省が先週発表した2018年度の児童生徒の問題行動に関する調査結果を見て、そのことを思い出した

 ▼いじめの認知件数が前年度比13万件増の54万件に上ったというのである。前の年度から3割以上も増えているとは穏やかでない。ところがこれ、文科省が早期発見の指導を強めたがゆえの数字という。現場が「どちらかといえばいじめ」もカウントしたのだろう。これまではどちらとも判断できないとしていた事例を、いじめのくくりに入れたのだ。文科省としては政策効果が現れた、と鼻高々かもしれない。ただ、大切なのは認知件数の激増がいじめ解消につながるかどうかである

 ▼いじめの芽を早く摘めるならいいが、今の学校にそんな余裕や力量があるだろうか。件数に追われる教師が、当事者同士を握手させて終わらせるような安易な方法に走らないとも限らない。調査は文科省が仕事をした気になるためでなく、子どもたちのためにこそあるのだが。


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