日本は1980年代の終わりまで電子立国として栄え、半導体や電子計算機の市場で世界をリードしていた。若い人には信じられない話だろう。あの華やかな時代も今は昔である
▼総務省が7月に公表した「情報通信白書」にその停滞ぶりを端的に示すデータがあった。各国のICT投資額の推移である。95年を100としたとき、15年に米国とフランスは300、英国は150。日本はというと100のままだった。中国の投資額は不明だが、AI(人工知能)の導入状況を見ると中国は85%で世界一。51%で2位の米国を大きく引き離している。これも日本は39%にとどまり先進国の中では下位クラスだ。つまり日本はこの分野で世界から大きく後れを取っているのである
▼そんな閉塞(へいそく)した状況を打開するきっかけになるかもしれない。ネット関連サービスのポータルサイト「ヤフー」を運営するZホールディングスと対話型SNSを提供するLINEが18日、経営統合に基本合意したと発表した。利用者は単純合計で1億人超。双方の強みを生かしてサービスを有機的につなげ、世界をリードするIT企業を目指すそうだ。米国の「GAFA」、中国の「BAT」といった巨大プラットフォーマーと同じ土俵に立とうというのである
▼ただ売上高や株式時価総額、研究開発費で示される体力、実力差は力士でいえば白鵬と炎鵬の比ではない。壁は高いだろう。情報通信白書は今後の日本経済の成長の鍵を握るのはICTだと指摘していた。この動きが電子立国復活ののろしになるといいのだが。