現実にそれで痛い目に遭った人が多いからか、落語には早合点の滑稽さを描いた噺が多い。「しめこみ」もその一つ
▼亭主が予定より早く家に帰ると金目の物が風呂敷に包まれている。妻の姿はない。それを見た亭主は妻が浮気して逃げる用意をしていたと思い込んだ。妻が戻ると烈火のごとく怒り出し、「証拠は上がってんだ。離縁するから今すぐ出てけ」と取り付く島もない。実は空き巣狙いの仕業だったのだが。冷静に考えればすぐ間違いに気付いたはず。ところがパッと見て浮気と決めてしまったものだからもういけない。あとはその結論に引っ張られ妄想を膨らませていくだけ。こちらも似たようなものでないか。国民民主党や立憲民主党などが首相主催の「桜を見る会」の「前夜祭」を追及している件である
▼彼らの疑いはこうだ。一流ホテルなのに会費5000円で開けたのはおかしい。首相側が補てんしたかホテル側の便宜供与があったのでは。それなら公職選挙法や政治資金規正法に違反する―。どうやら自分らが持ち出した「高級店のすしが出ていた」「1万1000円以下ではできない」との情報で違法の結論に飛び付いたらしい。ただどちらも事実ではなかった。出席者もホテルの正式な領収書を受け取っている
▼すると今度は怪しいからホテルの担当者を国会に呼ぶと言い出す始末。ここまでくると民間の自由な商行為を政治力で圧迫するに等しい。条件によって料金が変わることは、普通の社会人なら誰でも知っている。頭に血が上っている野党の方々も少し冷静になった方がいい。