岐阜のいじめ自殺

2019年12月10日 09時00分

 漫画家の西原理恵子さんが朝日新聞の長期特集企画〝いじめられている君へ〟に寄稿した一文を久々に思い出した。タイトルは「上手にうそをついて」(2012年)

 ▼西原さんはこんなことを語っていた。「亡くなった夫は、戦場カメラマンでした。戦場で銃を突きつけられたことが何度もあったけど、一番怖かったのは、少年兵だって」。物事の重大さが分からないため人を殺すことにためらいがないのだという。この事件の加害少年たちも自分の行為の残酷さに無自覚なまま、いじめをエスカレートさせていったのでないか。岐阜市で7月、いじめを苦に自殺した中3の男子生徒は、その前日にトイレの和式便器に頭を突っ込んだ形で土下座させられていたそうだ。市の第三者委員会が先週、明らかにした

 ▼亡くなった生徒は際限のないいじめでぎりぎりの状態にあったとき、土下座によって人間としての尊厳を決定的に傷つけられ、心の糸が切れてしまったらしい。加害者は同じ組の3人ほどの男子だった。このところ中高生の自殺が増えている。文部科学省によると18年は中学生が08年比2・8倍の100人、高校生が2・3倍の227人だ。状況別でいじめに分類される例は少ないが、原因不明が6割あるのを見れば水面下に隠れている例も多いと考えざるを得ない

 ▼西原さんはさらにこう続けていた。「この国は形を変えた戦場なんです」。追い詰められ絶望して、自らこの戦場で命を断つ子どもが増えていいはずがない。子ども同士で解決できることには限界があろう。大人が最前線に立たねば。


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