ことしのノーベル化学賞に輝いた吉野彰旭化成名誉フェローの授賞式がきょう未明、ストックホルムで開かれた。皆さんが新聞を読むころには式後の晩さん会も終わり、吉野さんもやっと一息ついていよう。この最後の行事まで、受賞者には分刻みの日程が用意されていると聞く
▼吉野さんはうれしくも忙しく、緊張する場面も多いため大変だろうが、多くの日本人にとってはとても誇らしいノーベルウィークである。8日の記念講演も印象的な内容だった。リチウムイオン電池とAI(人工知能)、EV(電気自動車)、インターネットが組み合わさると、想像を超える社会進化がもたらされると語ったのだ。IT革命ならぬ「ET(エネルギー・テクノロジー)革命」の提唱である
▼それが実現した暁には、現在は並び立たない経済と環境、利便性を高度に調和させることができ、持続可能な社会が訪れるという。その上で自身が開発したリチウムイオン電池は、その革命の中心的役割を果たせると胸を張った。持続可能といえば今、スペインで国連気候変動枠組み条約締約国会議が開かれている。国際環境NGOはこれに合わせ石炭火力発電の削減に不熱心との理由で日本に「化石賞」を与えたそうだ。話題の活動家グレタさんもやはり先進国に厳しい発言を繰り返している
▼まあ批判は自由だし必要な面もあろう。ただ、地道な研究を40年黙々と続け、持続可能な社会の実現に直接貢献する技術を開発した吉野さんのような人がいてこそ世界は変わる。口先一つで変えられることなどそれほど多くはない。