ベテラン従事者の経験則の反映が大きなポイント
札幌市は2020年度に、道路の排雪時にAI(人工知能)を使い、作業現場から最適な雪堆積場を選定するシステムを構築する。気象やリアルタイムの作業状況などビッグデータを活用。最大100以上が同時稼働する排雪現場に、最適な搬送先をAIを使い全市的視点で選ぶ仕組みをつくる。21年度は実際の業務と並行した仮想運用で検証を進め、22年度の運用開始を目指す。
197万人を抱える札幌市の除排雪は最大1000台の除雪車両、約2000台のダンプトラックを用いるなど、その体制は国内最大規模。排雪作業の繁忙期には市内で100以上の現場が同時に稼働し、多くのダンプが郊外に点在する70カ所以上の雪堆積場へ列を作る。
現状、搬送先の選定は市内23地区で除雪を請け負う共同体のベテラン従事者が、経験に基づき最適な場所を選定。隣接区と調整し、地区単位で作業効率が高まるよう交通整理している。
一方、雪堆積場の多くは民有地。近年は利便性が高い市街地近郊の確保が難しくなっていて、JR札幌駅からの距離で10㌔以上が43%、5―10㌔が53%と郊外化が進む。
ダンプの運転手不足が強まる中、距離の伸長による運搬効率の低下は作業全体を左右する大きな課題。加えて、高齢化に伴うベテラン従事者の減少で堆積場選びの経験伝承も必要になっていた。
このため、市は雪堆積場選びのシステム化を発案した。降雪や積雪、気温といった気象データなど過去からの蓄積データ、現場から堆積場までの距離、各現場の進ちょくや堆積場利用状況などをリアルタイムでデータ収集。全市的な視点からシーズンを通じ、最適化する仕組みの構築を目指す。
現場と最寄りの堆積場を結び付けることが基本だが、経験豊かな従事者は搬送回数の多い繁忙期に近くの搬送先を使うことを想定し、シーズン前半はあえて遠い場所を使うこともある。
こうした経験則をAIの判断に反映できるかが大きなポイントだ。
このため、札幌市立大と連携し、同大AIラボがベテラン従事者の判断も参考にAIの研究、開発に取り組む。
(北海道建設新聞2019年12月18日付10面より)