身にまとう宝石や金を貧しい人々に分け与えた王子像の話「幸福な王子」で知られる英国作家オスカー・ワイルドは、「わがままな巨人」という童話も書いている
▼美しい花と豊かな芝生、立派な木がある素晴らしい庭を持つ巨人の話だ。そこではいつも子どもたちが楽しく遊んでいたが、ある日巨人は「俺の庭は俺の物だ」と子どもたちを追い出してしまう。その日から庭は冬に閉ざされ、春が来なくなるのである。子どもたちがいたからこそ、庭は豊かさを保っていたのだ。巨人のわがままがそれを台無しにした。現代の巨人とも呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムのいわゆる「GAFA」も、この童話から学ぶところがあるのでないか
▼個人データの扱いや優越的地位の乱用、デジタル市場の寡占化といったある種のわがままが世界的に問題視されている。日本も規制に乗り出した。政府が17日、「デジタル市場競争会議」で5項目の規制策をまとめ、公表したのである。政府は今後、個人情報保護や取引先との契約適正化、定期的な運営状況報告といった観点で新法制定を進めるという。力をかさに着た横暴は許さないというわけだ。国内ではヤフーや楽天などのプラットフォーマーも対象になる
▼巨大IT企業は大きくなり過ぎて、自分の身勝手な振る舞いを制御できなくなっているのだろう。童話では巨人が真実に気付きわがままを反省すると、子どもたちも豊かな庭も戻ってくる。法規制という冬も、IT巨人の自制心を取り戻す良い機会になるといいのだが。