令和の時代になって初めての年の瀬である。とはいえほとんどの人にとっては特に変わったこともあるまい。「垂直に時の逃げゆく年の暮」北村風居。改元、台風、ラグビーワールドカップ―。ことしもあっという間だった
▼さて立派な種が育まれることを意味する「己亥(つちのとい)」は飛躍に向け力をためる年だったが、来年はどんな年になるだろう。恒例により「干支(えと)」が物語るところを紹介したい。2020年は「庚子(かのえね)」である。「庚」は両手できねを持ち穀物をつく姿をかたどった字で、そのさまから足元を築き固める意味を持つ。また発芽した植物の枝や葉などに硬い筋が入り、成長の最終段階に至るとの字義もある
▼一方、ねずみ年として知られる「子」は、大人と違い全身に占める頭の比率が大きい小児の姿をかたどった字だ。小児であるゆえ潜在力の固まり。そこから、新しい命が生まれることやどんどん増えていくこと、また万物が茂ることなどが導き出されるという。どちらの字も成長を表していて力強い。陰陽五行ではこれが組み合わさって「庚子」になると、さらに縁起が良いそうだ。「庚」は金、「子」が水でどちらも陽の性質を持つため「相生」となり、それぞれが互いを生み出す好循環を招く
▼前回の1960年は、「所得倍増計画」を打ち出した池田勇人内閣が発足した年である。その後、高度経済成長が加速したのはご存じの通り。情勢は異なれど、今が時代の変わり目であることは間違いない。うまく運気をつかみ成長の波に乗りたいものである。