ことしはねずみ年である。干支の解釈は別にして、ねずみと聞いてまず思い浮かべるのは小さな生き物であることと、個体数が急速に増えることだろう。小ささを一際強調したことわざに「大山鳴動してねずみ一匹」があり、瞬く間に数が増えるさまを表す言葉に「ねずみ算式」がある
▼その年だからというわけではあるまいが、この事件も「ねずみ一匹」で終わりかと思いきや、関係する人物がどんどん増えていく。このところ世間を騒がしているカジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡る贈収賄疑惑の話である。おととい、日本維新の会の下地幹郎衆院議員が記者会見し、中国企業「500.com」側から提供された現金100万円を受け取っていたと認めた
▼この事件では東京地検特捜部に収賄の疑いで逮捕された自民党の秋元司衆院議員の他、同じく自民党の4人の国会議員と下地氏の名前が挙がっていた。「500」社側の供述による情報だそうだが、下地氏以外はいずれも受領を否定している。東京地検はさらに、別の議員らへの聴取も進めているようだ。疑惑の人脈はねずみ算式に膨らんでいる。とはいえ今のところ逮捕は秋元氏のみで、名前の挙がった人も、もし受領していたとしても職務権限がないため政治資金規正法違反程度にとどまる見込みらしい
▼そうそう、ねずみといえばもう一つ特徴的なイメージがあった。『ゲゲゲの鬼太郎』の妖怪「ねずみ男」に代表される小ずるさである。国会議員には中国企業の裏金で転ぶようなひきょうな人物などめったにいないと信じたいが…。