締め切りに間に合わせるためほとんど寝ずに仕事をしていた手塚治虫さんの逸話がよく知られているせいか、漫画家といえば夜に日を継いで必死に働く人のイメージがある。ただ人気漫画家といってもそんな人ばかりではないらしい
▼『週刊少年ジャンプ』(集英社)で40年間一度も休まず『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の連載を続けた秋本治さんは、朝の9時に仕事を始め、夜の7時には切り上げているそうだ。しかも間に各1時間の休憩を2回挟み、休日もしっかり取るという。アシスタントも同じ体制で、タイムカードを使って出退勤管理もしているというからその徹底ぶりには驚くほかない。『秋本治の仕事術』(集英社)で知ったことである
▼秋本さんにとってはいまさらだろうが、世間では最近、「働き方改革」の声が急激に大きさを増してきた。政府が重点施策に据えているのに加え、実体も分からぬ顧客満足度を維持するため働く者に無理を強いてきた企業のやり方に限界もきているのだろう。象徴的なのは24時間営業の相次ぐ見直しや廃止である。ローソンやセブン‐イレブンといった大手コンビニチェーンの時短営業容認に続き、全国で「ガスト」などを展開する外食大手すかいらーくホールディングスも20日、4月までに系列全店で24時間営業を廃止すると発表した
▼少子高齢化で労働力人口が減る一方の日本。人手不足は企業にとって死活問題だ。「規則正しい勤務体制こそが理想の働き方」。不沈激しい漫画界で40年トップを走り続けた秋本さんのこの言葉は大いに参考になろう。