戦後長い間、日本経済が米国の対日政策や景気に大きく左右されてきたのはご存じの通り。占領下にあるときはもちろんのこと、独立を回復してからも構造改革や規制緩和、米国産品の輸入拡大といった要求に応じ続けてきた
▼米国の経済が停滞するときは、やはり共に沈んだ。まさに一心同体である。そんな日米関係を表すのに当時はこんな言葉が使われていた。「アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪を引く」。近頃は情勢が変わりそんなことも少なくなったが、グローバル経済は日本をそのまま放っておくほど甘くはない。すぐに米国の代わりをよこした。最近は「中国がくしゃみをすれば日本が風邪を引く」である。今回の新型肺炎騒動では、あらためてその現実を見せつけられた
▼感染拡大で生活や産業に深刻な停滞が生じている中国のあおりを受け、国内中小企業の事業活動にかなり支障が出ているという。支援のため政府が緊急対策に乗り出すそうだ。ウイルスへの対処だけでは十分でないらしい。最新の統計(2018年)を見ると対中国輸出は15兆9000億円、輸入は19兆1900億円でどちらも国別1位。訪日中国人観光客も959万人で断トツである。「さっぽろ雪まつり」もことしの人出は少なかったが、京都や奈良も閑古鳥が鳴いていると聞く。部品製造を中国に頼る企業も困り果てていよう
▼しかし中国のくしゃみでここまで「風邪」が悪化する日本の産業構造もいかがなものか。騒動が一段落したら、日本はこの病気がぶり返さないよう体質改善と予防に取り組んだ方がいい。