また覚せい剤

2020年02月18日 09時00分

 波乱万丈の人生を歩んだ文学者太宰治には、パビナールという麻薬性鎮痛剤の依存症に苦しめられていた時期もあった。その経験を反映させたものだろう。『人間失格』にモルヒネを使う場面がある

 ▼自分で腕に注射すると「不安も、焦燥も、はにかみも、綺麗に除去せられ、自分は甚だ陽気な能弁家になるのでした」。しかも疲れを感じず、仕事にも精が出て、普段考え付かないようなアイデアも出たりするという。主人公の男は節度を持って薬を使えると思っていたらしい。ところが1日1本が次第に2本になり、4本になり。禁断症状もひどく、ついにそれなしでは生活ができなくなってしまう。こうなるともう自分を抑えることもできない

 ▼シンガーソングライターの槙原敬之容疑者(50)が先週、覚せい剤取締法違反などの疑いで逮捕された。1999年にもやはり同法違反で逮捕され、有罪判決を受けている。あれから21年もたっているのに、自分を抑えられるまでには至っていなかったということか。警察庁組織犯罪対策企画課がまとめた19年の情勢によると、覚せい剤再犯者率は全年代平均の66.1%に対し、40―49歳が71.8%、50歳以上が82.6%と高い。年齢が上がるほど依存から抜け出すのが難しくなるようだ。槙原容疑者もその例に漏れない

 ▼先の小説でモルヒネを使うきっかけは、薬局の奥さんが親切でくれた注射液だった。「酒よりは、害にならぬと奥さんも言い、自分もそれを信じて」、気軽に始めたのである。甘い言葉に誘われ、安易に手を出してはいけない。どんなときも。


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