7空港を地域の足に整備 北海道エアポート社長 蒲生猛氏

2020年02月19日 09時00分

10年後見据え新千歳機能強化

 道内7空港の民間運営が始まった。30年間の投資額は約4290億円。豊富な観光資源を目的に多くの観光客が訪れる一方、空港によって利用者数に差があるのが現状。民間運営を契機に地域の活性化に期待されるが、どのような手法で7空港を率いるのか考えを聞いた。(建設・行政部 瀬端 のぞみ記者)

 ―稼ぐ空港のつくり方は。

 人口減少と高齢化が進む中、地方空港の収益を上げるには、多くの外国人に来てもらう取り組みが必要。この構造は現在、地方の廃線問題を抱えるJR北海道が置かれている状況と同じ。それでも30年間は運営すると宣言した。一つのインフラとして地域の足をきちんと確保したい。新千歳以外の地方6空港では、今から5年程度で施設整備などハード的な受け入れ体制を整える。ここが不十分だから空港を利用しないという問題を全てクリアしなければいけない。その後、商品開発などソフト面にも注力する。7空港それぞれにある特長をうまく生かし、この空港に行かないと楽しめないというものを一つずつつくっていけたらいい。

 物流についても強化したいと考えている。アジア圏の人たちに北海道を広く知ってもらうには、どんどん道産食材を外に出していくことが大事だ。今は成田、羽田両空港が国内空輸の中心となっているが、道内空港から輸出を増やす取り組みも進めていきたい。

 ―7空港で唯一、稚内の空港ビルを建て替える。

 稚内空港の利用者は道内で一番少ないが、地域医療に欠かせない医療スタッフや学校の先生が多く利用する。これは採算が合う、合わないではなくて、まちの人が生きていくための生命線といえる施設。ただ、ターミナルビルは相当古くなっている。他の空港は中を変えるだけだが稚内だけは全て建て替える提案をし、新施設には空港利用者だけでなく、地域住民も集まる道の駅のような機能を持たせたいと考えている。これらが必要な機能なのか地元の関係者と相談しながら固めていく。

 これから北海道で広域的な観光をやるとなれば、一番端の稚内は本道の懐を深くするために力を入れる必要がある。将来的にロシアとの関係を考えれば、重要なポイントとなる空港になるのではと個人的に思っている。

 ―広域移動に欠かせない2次交通をどのように考えているか。

 空港からバスやタクシーなど2次交通として何が使えるのか的確に情報を届けることができれば、利用者のストレス軽減につながる。例えば悪天候で飛行機が飛ばなかった場合、函館空港だったら新幹線を使えば東京に、フェリーなら青森まで行けるといったことを、利用者が分かってもらえるような仕掛けを考えていきたい。目的地へスムーズに誘導できるよう各交通事業者と連携し結節点の役割を果たしていく。

 ―軸となる新千歳の今後は。

 1時間当たり最大42回とする発着枠が今春から50回に増える。運営期間中にさらに増える可能性もあるが、今以上の機能を果たそうとしたとき、何が必要なのか今から考えないといけない。参考にしているのが新千歳と同規模の福岡空港だ。ターミナルビルを造り替えていて、2本目の滑走路を整備するときは運営事業者が地域に説明している。そういう部分を学んでいきたい。

 2030年には北海道新幹線札幌開業や開催を目指す冬季五輪がある。滑走路や誘導路、スポット、ターミナルビルは今のままで大丈夫といえない。残り10年で相当のことを真剣に考えなければならない。

 蒲生猛(がもう・たけし)1956年5月25日生まれ、宮城県仙台市出身。81年北大卒業後、旧運輸省入省。航空局大阪航空局長などを歴任。15年10月国土交通省を退職。16年1月北海道空港顧問、専務を経て19年9月から現職。

(北海道建設新聞2020年2月18日付1面より)


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