大河小説『青春の門』などで知られる作家五木寛之氏がエッセーにこんな話を書いていて、読んで思わず笑ってしまった
▼「タクシーを待っていると、なかなかこない。やっと来たと思えば、客が乗っている。必要がないときには、続々と空車がやってくる。なんだ、こりゃ」。似たような経験をしている人も多いのでないか。おまけに雨まで降ってきて、車がはね上げた道路脇の水で体がびしょ濡れになったりして。悪いことは重なるというが、そんなことも確かにあるようだ。安倍首相も今、自身の不運を呪っているかもしれない。2019年10―12月期の国内総生産(GDP)が実質で前期比1.6%減、年率換算で6.3%減と、5四半期ぶりにマイナスに転じたのである
▼反対をはねのけ断固として消費税率10%化を実行したものの、大型経済対策に国民はさほど踊らず、台風や暖冬の影響もあって消費は伸び悩んだ。20年1―3月期に託した回復の望みも、新型コロナウイルス騒動で断たれてしまった。まさに踏んだり蹴ったり。日本経済を引っ張るのは個人消費だが、このエンジンが今後も未知のウイルスによって不完全燃焼を強いられる。何せ外出は控えイベントも自粛、海外から観光客も来ないのだから消費の高まるはずもない。景気悪化はほぼ確実だ
▼五木さんは「幸運二分、不運八分」と覚悟すれば平然としていられると言うが、国の浮沈が懸かることだけにそう悟りを開いてもいられない。ここは積極的にタクシーを探しに行くべきだろう。まずは徹底してこのウイルスを抑え込みたい。