検事長の定年延長

2020年02月28日 09時00分

 信用第一とはありきたりな言葉のようで実は人間関係の根幹を成す理念だろう。『論語』の子張第十九にもこんな一文がある。「子夏が曰わく、君子、信ぜられて而して後に其の民を労す。未だ信ぜられざれば即ち以て己れをやましむと為す」

 ▼君子は信用されてはじめて人民を使う。まだ信用されてもいないのに使おうとすれば、人民は君子が自分たちを苦しめようとしているのだと考えるものだ、というのである。根拠のない批判も多いが、この件に関しては安倍首相も自らの信用について真剣に考えた方がいいのでないか。黒川弘務東京高等検察庁検事長の定年延長問題である。黒川氏を次期検事総長に据えたいがために、異例ともいえる法解釈変更までして延長実現に動いているように見えて仕方がない

 ▼検事総長任期は2年が慣例のため、稲田伸夫現総長は今夏で退任する。ところが次期有力候補黒川氏の定年は今月。これに困った政府が窮余の策として国会公務員法の特例延長制度を持ち出したわけだ。内閣に任命権があるとはいえ、検察トップの検事総長は独立性と不偏不党が命。これまでも人事に当たっては属人的になることを避け、制度に則り順当に席を埋めてきた。誰がなろうと法の執行に違いはないとの理念からだ

 ▼ただ、今回のように政府が定年延長を画策までして黒川氏を推すとなると話は怪しくなる。こうした三権分立に直接手を出すことは「モリカケ」や「桜を見る会」とは次元が違う。首相に思惑などなくとも疑いを持たれるだけで信用に傷がつく。ごり押しは控えた方がいい。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • オノデラ
  • 古垣建設
  • 北海道水替事業協同組合

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,421)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,283)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,250)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,124)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (843)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。