信じて、任せて、感謝すること
苫小牧建設協会がこのほど市内で開いた講演会で、北海道日本ハムファイターズの2軍監督やヘッドコーチなどを歴任した白井一幸氏が、自ら実践してきた選手の育成方法を基に指導者としての人の育て方を伝えた。
講演要旨は次の通り。
私がファイターズの2軍監督を任された時、球団が最も弱い時期にプレーしていた自分に質問してみた。自分、チーム、選手、指導者も皆頑張っていたはずなのに結果が出なかった。そこで、頑張り方が間違っているのではないかと考えた。
大事な試合でエラーをすると、選手は何をやっているのだろうと自分を責める。コーチに「気合いを入れろ」と怒られ、恐縮し、選手はさらにミスをする。選手は分かり切っていることを何度も教えられイライラするだけだ。
教えれば教えるほど嫌がられ、人間関係が壊れる。「頑張れ」という言葉は人から言われるものではなく、自分に対し言うもので、選手は上手くならずに疲れるだけ。これが一般的な指導方法である「怒る、教える、やらせる」の弊害ではないか。
こうした指導方法が常態化していることが、球団低迷の原因だと気付いた。ミスした本人が一番辛い。だからこそ「普段から努力しているのは知っている」「お前ならできるから取り返してこい」と励ますと、選手は「自分のことを見てくれている」「気にかけてくれている」と萎縮せずにプレーできるのではと考え、実践した。
その結果、私が2軍監督を任された後の2006年、日本シリーズの経験者がいない中で選手が立ち上がり優勝した。「ファイターズの選手は楽しそうで、プレッシャーがなく、伸び伸びやっている」と言われた。ミスした後に元気になっていく球団になった。
指導者が選手に質問することも大事だと思う。「はい」と単純に答えられる質問だけではなく、相手の考えを促すようなオープンクエスチョンを意識した質問がいい。選手にたくさんしゃべってもらえる質問が大事で、コミュニケーションの大切な力は「聞く力」だ。
人は任されると、より頑張ろうという気持ちになる。「信じて、任せて、感謝すること」が大事では。あそこが悪い、ここが悪いとたたけば人間関係が悪化する。「学び」と「行動」は車の両輪で、経験から行動ばかりを意識しがちだが、両輪が動いて初めて前進するものではないだろうか。(苫小牧)
(北海道建設新聞2020年3月5日付11面より)