どうしても欲しいが他人の物で簡単に譲ってもらえそうもないときはどうすればいいか。落語「猫の皿」では茶屋で使われている猫の餌皿を手に入れたい客が、いろいろ策を弄(ろう)して店の主人をだまそうとする
▼古道具に目が利く客はその皿が三百両は下らない逸品と見たのだった。自分も猫を飼っているだの、ちょうどいい餌皿を探しているだの口から出任せを言い放題。主人から取り上げようと手を尽くす。落語だから笑えるものの、実際にこんな怪しい客がいたら大いに警戒するに違いない。ところが現実にはだまされるまで気付かない人が後を絶たないのである
▼道内で被害が加速している。道警が8日公表した2020年3月末時点の特殊詐欺事件発生状況(暫定値)によると、認知件数は39件、被害総額は9831万円に上った。前年同期に比べ13件、3970万円増えている。種別で最多は17件のキャッシュカード詐欺。不正利用されているから回収するなどと言って、だまし取る手法である。次いで多いのは銀行口座におかしな点があるとして通帳や暗証番号の提供を求める預貯金詐欺の13件。どちらも警察官や銀行関係者を装って現れるのが特徴である。一方で従来型のオレオレ詐欺は1件のみ。詐欺団も次々と新手を繰り出しているようだ。知識を更新しないとだまされてしまう
▼さて、先の噺では主人が断固として皿を渡さなかった。客が訳を聞くと「高価な物だから盗まれないよう安物に思わせている」。主人に倣って詐欺団の考えを読み、うまく出し抜いて警察に突き出したい。