障害を力に

2020年04月15日 09時00分

 盲ろうの障害を乗り越え一生を社会福祉の向上にささげたヘレン・ケラーは、盲目の学者塙保己一を尊敬していた。保己一は江戸後期に、散逸しつつあった日本の古い文献を収集し665冊の『群書類従』を刊行した人である

 ▼7歳の時に病で視力を失い三味線やあん摩の道に進んだものの、覚えが悪く挫折。自殺に失敗したことで不退転の覚悟を固め、子どものころから好きだった学問を究めることにしたのだった。なぜこれほど大きな仕事を成し遂げられたのか。秘密は人並み外れた記憶力と集中力にあった。生まれつき頭の良い子だったが、ハンデを克服する過程で持ち前の能力がさらに磨かれたらしい。障害を生きる力に変えたのである

 ▼科学技術振興機構が13日、来年4月からの日本科学未来館新館長に「IBM T・J・ワトソン研究所」の浅川智恵子フェローを選任すると発表した。浅川氏も事故が元で中学2年の時に失明。その逆境を糧に、誰にでも使いやすいWeb環境を研究してきた人である。視力を失い一番つらかったのは自立性をなくしたことだという。何をするにも他人の助けがいる。教科書も一人では読めない。浅川氏は技術で自由を取り戻そうとコンピューターの世界に飛び込んだ

 ▼その努力は1992年に日本語デジタル点字システム、97年に世界初のホームページ音声読み上げブラウザとして実を結ぶ。以前、講演サイト『TED』でこんな趣旨の話をしていた。「不自由を克服するための挑戦がイノベーションを刺激する」。科学と未来の殿堂で次は何を見せてくれるのか。


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