原っぱと聞くと遠い昔に大勢の友だちと楽しく駆け回った日々を思い出す人が多いだろう。歴史学者立川昭二氏も随筆『こころの「日本」』(文藝春秋)に、「原っぱは、なにより子どもたちの解放区であった」と記していた
▼放課後や日曜日などは特に約束していたわけでもないのに、近所の仲間たちが皆自然と原っぱに集まってくる。鬼ごっこをしたり草野球に興じたり。大人も余りうるさいことを言わなかった。小説家の北杜夫は『楡家の人びと』(新潮社)で原っぱをこう描写していた。「訪れる人の数によって、急に生気を帯びにぎにぎしくさざめいて見せたり、突然がらんと人気もなくなっていやにひろびろと拡がって見せたりした」
▼街で原っぱを見掛けなくなって久しいが、今あったとしてもそこに大勢の子どもを見るのは難しいに違いない。総務省が14日発表した2019年10月1日時点の日本の総人口の推計によると、15歳未満の年少人口は過去最少を更新し1521万人に落ち込んだそうだ。全人口に占める割合を見ていかに少ないかを実感させられた。12.1%だという。8人に1人である。北海道はといえば56万5000人で本道人口に占める割合は10.8%。この割合は47都道府県中、秋田、青森に次いで低い
▼広い北海道である。今も原っぱならいくらでも用意できるのだが、遊びに来る子どもたちがいないのではどうしようもない。もしあっても、「いやにひろびろと」見えるだけだろう。急速に進む少子化に手をこまねいているだけだったこれまでの政治がつくづく嘆かれる。