先月22日に根室管内初の高規格幹線道路となる44号根室道路が開通した。地元の悲願だっただけに関係者の喜びもひとしおだろう。温根沼と根室両IC間7・1㌔は地吹雪常襲地帯だっただけに、代替道路ができた意義は大きい
▼30年程前、釧路支社にいたころ筆者も週に何度か根室市に通っていた。半島の付け根に位置する温根沼付近を走りながら、「ここが寸断されるとほぼ陸の孤島だ」とよく考えたものである。その心配が今回、生命線が増えたことで解消された。冗長性(リダンダンシー)を確保したわけだ。冗長性とは必要最低限に加え余分や重複もある状態のこと。端的に言えば「あちらがだめでもこちらがあるさ」だろう
▼日本の新型コロナウイルス対応でも医療分野の冗長性が期せずして功を奏した部分があるようだ。日本は他国に比べ病院や病床、CTの数が格段に多い。OECDのデータ(2017年)によると病院数は8400施設、病床数は165万床でどちらも2位の米国の2倍である。新型肺炎の早期診断に活躍したCTも100万人当たり111台と飛び抜けて多い。いずれも過剰だと批判されていたが、こうなってみるとそれが役に立ったわけである。現にまだ危機は続いているものの、日本の死者数は15日現在で119人と世界の中ではかなり低い
▼低成長のここ20年ほど、どの分野でも例外なく無駄の排除と緊縮がもてはやされてきた。強みまでむざむざ捨てることはないのだ。大事な冗長性を犠牲にしてこなかったか、これを機に今一度考えてみる必要があるのでないか。