いずれも最大震度6だった1993年の釧路沖地震と94年の北海道東方沖地震、二つを経験したことは以前、当欄で触れた。液状化や揺れによって道路や港、河川堤防といったインフラに大きな被害が出たのはご存じの通り
▼ところがもともと地震が多い土地柄で耐震対策もしっかりしていたからだろう。幸いにも家屋や人には思ったほど被害が出なかった。もう一つ良かったのは津波がほとんどなかったことである。次はそんな幸運に恵まれないかもしれない。内閣府の有識者検討会が21日、日本海溝・千島海溝沿いの北海道沖から岩手県沖で巨大地震が発生したときの津波想定を発表した。釧路市では最大20・7mの津波を予測しているそうだ。えりも町では27・9m、広尾町では26・1mと背筋が寒くなるような数字が並ぶ
▼筆者は釧路沖地震発生当時、釧路市中島町に住んでいた。市のハザードマップを見ると高さ10mの津波が沿岸を襲った場合、この地区は5―10m浸水する。人ごとではなかったわけだ。5mといえば2階建て家屋がすっぽり水没する高さである。3年前に仙台市宮城野区の住宅街で見た光景を思い出す。友人に案内してもらい指し示された先を見ると、家の最上部に東日本大震災の津波が到達した跡があった
▼検討会は今回の想定について、「切迫性が高い」と警鐘を鳴らす。この震源域では数百年ごとに巨大地震が起きているため、前回が17世紀だった点を踏まえると油断はできないというのである。まずは関心を持って自分で調べ、備えることが大切だ。決して人ごとではない。