都市土木に注力 工程直結の相談も対応
広域特需営業部の基礎機械課は、首都圏の大型プロジェクトを下支えする。港湾土木や道路、河川改修などに関わる。構造物を支える杭の打設に関し、施工環境に考慮しながらバイブロハンマーやウォータージェットなどをゼネコンに提案営業する。
実際に打設できるかをシミュレーションしたり、発生振動レベルの予測計算をする。振動予測は事業損失や調査半径の把握にもつながるため発注者から問い合わせを受けることも多い。
既存の杭を抜く際の破断も検討する。古い鋼製杭は腐食やさびで切れる可能性があり、調査することで破断リスクを避けることができる。破断は杭の板厚を上げることで対処するが、標準歩掛かりで定められていないため、設計変更時などに重宝されている。
建物やライフラインが密集する都心部では、大人1人が入れるかどうかといった極めて狭い施工環境が多い。中でも高速道路や鉄道は経済活動に大きな影響を与えるため、緻密な工程管理が求められる。そんな現場こそ基礎機械課の腕の見せ所だ。
「このピア(橋脚)は土留めしなければならないが、この狭いスペースでどうやって鋼矢板を入れたらいいだろうか」。積算面から現場に合った基礎機械を選ぶだけでなく、さまざまな現場で培ったノウハウやアイデアを通じ、工程に直結する相談に応える。土木工事を熟知しないとできない仕事だ。
山本勝也課長は「今後は都市土木に力を入れたい」と話す。首都圏の民間建築の現場で、鉄筋コンクリートなどの連続した壁体を地下に構築する〝連続地中壁工法〟を採用するゼネコンが増えてきた。これまでは鋼矢板やH形鋼で土留めしていたが、地下が大深度化しているため、耐力のある連続地中壁が支持されている。
敷地ぎりぎりに壁を設けるため、土中には昔の構造物基礎などが入っている場合が多い。これらを撤去する工法として注目されているのが、独・バウアー社のBG工法だ。障害物を削ったり、グラブビットでつまみながら撤去する。カナモトでは昨年から専用のアタッチメントツールを導入し、市場ニーズに応えている。
東京五輪後の不況が危惧される中、首都圏では土木の大型プロジェクトが景気を支えると期待されている。羽田空港の第5滑走路や東京貨物ターミナル付近から国内線ターミナルまでを結ぶアクセス線、押上駅から泉岳寺駅までの約11㌔に敷設する都心直結線などの整備だ。
さらに大阪万博2025やリニア中央新幹線、高速道路会社3社による大規模更新など、全国各地で大型プロジェクトが進行・計画されている。いずれも息の長い案件のため、建機レンタル需要は今後も底堅く推移するとみられている。
売り上げを直接上げられない広域特需営業部は、各現場(営業拠点)への関与度から社内評価を受ける。関与度をベースに基礎機械と地盤改良の2課が関わっている現場の売り上げは年間80億円強。部の発足時から4倍ほどに成長した。渡部純部長は「100億円を目指したい」と意気込む。
国内の建機レンタル業界は、2019年12月期で売上高2800億円強のアクティオ(本社・東京)が首位。カナモトは1800億円で2位につけ、その後を大阪の西尾レントオールが1540億円で追う。世界1位は米国ユナイテッド・レンタルズ社で、4位に日本のアクティオが入る。建機レンタル業界の頂は、いまだ高く険しい。
金本哲男社長は「ゼネラルレンタル・カンパニーになることで持続可能な成長基盤を構築し、100年企業になりたい」と、次の高みを目指す。
(北海道建設新聞2020年5月2日付2面より)