コロナ後のインバウンド

2020年05月25日 09時00分

 ある物で痛い目に遭うと、次からはそれを見るだけで怖くなる。一種のトラウマだろう。落語「芝浜」はそんな人間心理の機微を描いて面白い▼人はいいが酒を飲んでは仕事をさぼる魚屋の金さんがある日、道で50両を拾った。気が大きくなり大酒を飲むが、朝起きて妻に50両のことを尋ねるとそれは夢だという。ばかな夢を見たと反省した金さんは酒を一切やめ真面目に働くようになり、3年たつと一財産もできた。妻が告白する。50両は夢でない。あなたに一生懸命働いてほしくてうそをついたと。久々に酒を用意した妻に金さんが言う。「やめとこう。また夢になるといけない」。この新型コロナウイルスが下火になると、似たようなことを言う人が出てくるかもしれない。「外国人観光客を受け入れるのはやめとこう」

 ▼少し前まで、日本は空前のインバウンド景気に酔いしれていた。ところがこうして外国人観光客需要が一気に失われてみると、それに頼り切っていた実態が浮かび上がってきたのである。政府観光局は先週、4月の訪日外国人旅行者数が前年同月比99.9%減の2900人にとどまったと発表した。コロナが収束しても客足はすぐには戻るまい。観光を基幹産業とする本道にとってはかなりの打撃である。観光産業の裾野は広いのだ

 ▼割り切れぬ思いもあろうが、トラウマを乗り越えて外国人観光客誘致の旗は掲げ続けるべきだろう。需要の急激な変化に対応できる態勢を整えつつ、安全な日本に健康な人々を呼び込む方策を考えた方がいい。夢ならもっといい夢をみたいではないか。


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