テレビとSNSの罪

2020年05月27日 09時00分

 作詞家の阿久悠さんが自著『ただ時の過ぎゆかぬように 僕のニュース詩』(岩波書店)でテレビの罪に触れていた。「ほんとうにやっかいなんです、テレビという存在は」と阿久さんは嘆く

 ▼最も懸念されるのは距離感をおかしくしてしまうことだという。指摘の中身はこうだ。「すべてが二メートルの距離で対面暗示をかけられるわけで、心と心の距離感もうまくとれなくなる。思考が単純になり底が浅くなる」。この本は2003年の発行だが、現代はツイッターなどSNSの発達で問題がさらに深刻化している。テレビを見て出演者に悪感情を抱いた者が顔も名前も隠したまま、SNSを通してその出演者に悪口雑言、誹謗中傷の限りを尽くすことができるのである

 ▼シェアハウス内で暮らす男女6人の姿を生々しく見せるネットフリックスの番組『テラスハウス』(フジテレビ)に出演していた木村花さんが先週亡くなった。自殺とみられるそうだ。自身のSNSに非難の書き込みが殺到していたらしい。木村さんは女子プロレスラーで、ヒール(悪役)のため番組でもそうした性格設定をしていたようだ。それを現実と思い込んだ視聴者が怒りを募らせ、多くの人が同調、便乗して集中砲火を浴びせた

 ▼まだ22歳である。心が折れたに違いない。周りと深い絆で結ばれていた人ほど孤立したときの絶望は深いという。阿久さんはテレビにもこんな注意書きが必要と記していた。「人格を狂わすことがありますので、見方には気をつけてください」。木村さんを死に追いやった人々は肝に銘じるべきだ。


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