東京の前身である江戸は時代の先端を行く都市だった。1700年代前半に人口が100万人を超えていたのがそれを裏付けている。世界でもあまり例がない
▼それだけの人の生活を支える画期的インフラがあったということである。とりわけ重要なのは上水道と運河だろう。江戸の地下には水道網が張り巡らされ、皆必要なときに十分な量の水を使えた。煮炊きはもちろん、衛生を保つにも消防にも水は欠かせない。一方、運河は海と山と街を結び、産物や製品を迅速かつ確実にやりとりできる仕組みを社会に実装した。これが物流革命をもたらし、江戸の発展に大きく寄与したのである。その恩恵は、われわれが通販大手「アマゾン」の普及を経験したときの比ではあるまい
▼優れた点はまだまだあるが、全体として江戸は18世紀、世界でも他に類を見ない高度なシステムを誇る都市だったのである。その栄光再びの期待もかかろう。「スーパーシティ構想」を後押しする改正国家戦略特区法が先日、成立した。この構想は人工知能(AI)やビッグデータを活用し、社会のあり方を根本から変えるような都市づくりを進める試みである。実現を目指すのは自動運転やドローン配送、キャッシュレス、遠隔医療・教育、エネルギーの最適管理など
▼各国がわれこそはと、先行争いにしのぎを削っているそうだ。ところが日本は技術こそあるものの場がないため、若干遅れ気味なんだとか。この特区法成立を機に、かつてスーパーシティ江戸を265年にわたって維持した日本の底力を見せたいところではある。