貴重な構造物や思い出の風景を3D技術で形に ゆほびか

2020年06月18日 15時00分

 ゆほびか(本社・札幌)は、主力の3次元データ作成や出力サービスを発展させ、地域で名所となっているジオサイトや構造物の造形事業を強化する。親会社の建設コンサル・和光技研(同)と連携し、ドローンと3Dプリンターによる3D地形モデリングサービスを強化。欧州製の3Dレーザースキャナーを新たに導入し、地域として残したい貴重な構造物や思い出の風景を高い精度で形作りたいと考えている。

「思い出の造形化によって社会に貢献したい」と坂井社長

 和光技研の社内ベンチャー事業部として2012年に発足。活動の自由度を高めるため、14年に「株式会社ゆほびか」の社名で創業した。

 工業分野の3Dデータや建設コンサルの地図模型、医療用器具の製作などが仕事。一般消費者向けにはペットのフィギュア製作を5年余り展開している。

 造形作業に不可欠なのが米国・3Dシステムズ社の業務用フルカラー3Dプリンター。道内には数台しかなく、本州企業から注文を受けることも度々ある。石こうを材料に動物の毛並みやシワなど繊細な表現が可能だ。樹脂を材料にコストパフォーマンスが特長の高精度3Dプリンターも2台そろえる。

 ペットのフィギュア化は、愛犬などを亡くした家族の癒やしになればと始めたサービス。綿密な打ち合わせを繰り返し、容姿を絵で確認。色は照明による光の影響なども考え、顧客のイメージに合うよう細かく配慮する。完成まで2、3カ月ほどかかる。

 世界に一点の完全オーダー品のため、価格は長辺6cmのSサイズで2万8000円(税抜き)と高価だが、10万円余りする3Lサイズは本州を中心に引き合いが多いという。

 最近は手頃なフィギュアシリーズ「パートナーズ」を展開。セントバーナードや三毛猫など動物120種類余りをラインアップする。

 あらかじめポーズや色の決まった規格品のため2000円と割安で、自社の3D造形技術を広く知ってもらうためのきっかけになればと考えている。

 今後は和光技研と連携し、3D地形モデリングサービスを強化。新たに高精度の3Dレーザースキャナーを導入する計画で、和光技研が得意とするデータ取りから、ゆほびかが得意とするモデリングまで3D事業のワンストップサービス強化につなげる。

 社会インフラの維持管理時代を迎え、老朽化した構造物の中には費用対効果から取り壊されるものも多くなると予想される。地域のランドマークなどとして親しまれていると、こうした解体を惜しむ声は増える。同社では地域遺産に関する造形化ニーズは高まるとみている。

 道内には泊村のマウンテンゴリラ岩や積丹町の女郎子岩、芦別市の崕山(きりぎしやま)石灰岩尾根など地域の独特な景観をつくる地質・地形が多い。地域資源のジオサイトをアピールする上でも高精度な3D地形モデリングは訴求効果が高いと考えている。

 坂井敦行社長は「地域の人たちの思い出に残るものを造形しながら、今後も社会に貢献できるような事業を展開したい」と話している。

(北海道建設新聞2020年6月17日付3面より)


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