小説家の楊逸さんはスーパーへ買い物に行くといつも感心させられていたという。レジ係の手際の良さを見るにつけである。エッセー「袋のマナー」に書いていた
▼係の人が生ものと日用雑貨を別の小袋に分けた上で「最後にレジ袋がすぐ使えるように、ぴったりにくっついた袋の口を少しだけ開けてから籠に入れる」。至れり尽くせりというのはこうした「憎いほど嬉しいサービス」をいうのだろうと楊さんは記す。最近はこんな風景を見ることもめっきり減った。レジ袋の有料化でマイバッグを持参する人が増えたからである。ところが慣れたとはいえうっかり持っていくのを忘れるときもなくはない。ほんの数円だが買わねばならないとなると少し負けた気がするからおかしなものだ
▼あさって1日から、コンビニエンスストアでもこのレジ袋が有料化される。手ぶらでふらりと入って気軽に買い物できるのがコンビニの魅力だった。バッグ持参が前提となると、コンビニエンス(便利さ)は幾分低下しよう。経済産業省のプラスチック製買い物袋有料化が始まるのである。海洋投棄や地球温暖化を防ぐためだ。その志や良し。ただ間伐材を使うエコ製品の割り箸を、森林資源の無駄遣いと糾弾した愚の繰り返しにならないか心配だ
▼ポリエチレン袋も石油精製時の副産物を有効活用する。燃やしても有害物質は発生せず、プラごみ全体に占める量もごく少ない。レジ袋をいけにえにすることで、経産省が「仕事してる感」を出したかったのでなければいいが。数円が惜しくて言うわけではない。念のため。