遠隔臨場導入に動き 堀口組が現場検査を生中継

2020年07月01日 18時00分

映像活用CIM研究会と産学官CIMGIS研究会がオンラインで公開報告会

 現場からリアルタイムで配信された映像を活用して監督・検査を行う新技術「遠隔臨場」の本格導入に向け、国土交通省や道建設部が動き始めている。映像活用CIM研究会と産学官CIMGIS研究会は26日、建設業への遠隔臨場実装化を推進するため、2019年度の取り組み成果をオンライン上で発表する公開合同報告会を開催。堀口組(本社・留萌)は、手ぶれなどを軽減するジンバルカメラを使い、国道40号天塩町北産士改良現場での検査などを生中継し、留萌開建の合田彰文技術管理課長は20年度に3現場で遠隔臨場を試行すると紹介した。(関連記事10面に)

「Zoom」を活用して堀口組の遠隔臨場の取り組みを報告した

 公開合同報告会は、新型コロナウイルス対策のため、ウェブ会議アプリ「Zoom」を利用。全国の行政機関や建設業者、マスコミなど約250人が参加し関心の高さをうかがわせた。

 開会に当たり映像活用CIM研究会の須田清隆副会長は「これから見せる映像は、北海道で発注者と施工者が一緒になって段階検査をした映像。映像がぶれずリアルタイムで情報共有できる。課題や将来性、可能性を議論してほしい」と要請した。

 基調講演で立命館大の建山和由教授は「世界は新型コロナにより、経験に基づいて培ってきた価値観が根底から覆される事態もある。創造力と想像力を駆使して、新たな価値を模索しなければならない」と強調。

 続けて「日本はオンライン活用が遅れていて、建設産業も大きく変わっていかなければならない。従前を踏襲するだけでは社会変化に対応できない。AI活用などイノベーティブな人材を育成しなければならない」と警鐘を鳴らした。

 遠隔臨場の効果と課題については、堀口組のICTを担当するDX推進室の佐藤博室長と漆館直室長補佐が解説。同社は、19年度に国道231号増毛町大別苅トンネル補修と、国道232号苫前町力昼法面補修で遠隔臨場を活用している。

 漆館室長補佐は「導入に当たっては、通信環境を確認し電源供給が必要なため発電機などを使用し、ネットワークカメラは現場全体を把握できるように配置した。この映像は携帯やパソコンから閲覧できるので、現場から離れていても確認でき、各地からの管理が可能になった」と説明した。

 効果としては安全点検や社内検査などに遠隔臨場を活用し、一人当たりの現場への移動時間は243時間短縮されたとし、その時間を別の仕事に充てられることや、移動が減ることによる交通事故減少など、生産性とともに安全性も向上したことを報告。また、20年度の受注現場でコロナ対策として遠隔臨場を活用していることを伝えた。

 課題としては、映像の撮影の仕方など社内への浸透、ICT技術者の育成・確保、発注者が見たい映像を撮影して共有できるかの3点を挙げた。

 臨場見学会では「Zoom」を使って、国道40号天塩町北産士改良の現場検査を観察。視聴者が現場立会人となった。鈴木純也現場代理人が最新技術のジンバルカメラを使用して、コンクリートブロックを撮影。鮮明な画像で寸法を確認することができ、遠隔臨場による検査が可能なことを示した。

 発注者の立場から意見を求められた留萌開建の合田課長は、「北海道は現場と事務所が遠く広域移動を伴う。移動時間短縮による生産性向上にこの技術は有効。コロナ対策にも効果があると思う。留萌では試行工事3件を予定し、機器の使用や有効性がどの程度あるのか試す。試行要領はできあがっているのでカスタマイズし、今後拡大していくと思う」と述べた。

 また「災害時に技術者が遠くにいることもある。リモートで東京などの大学の先生に映像を見てもらい、対策工への助言をもらうなど対応もできるのでは」と、遠隔臨場に大きな期待を寄せた。

(北海道建設新聞2020年6月30日付1面より)


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