経験したことはないが、京都の夏はかなり暑いらしい。その地を舞台にした森見登美彦氏の幻想小説『四畳半タイムマシンブルース』(角川書店)にこんな一節があった
▼「京都の夏、我が四畳半はタクラマカン砂漠のごとき炎熱地獄と化す。生命さえ危ぶまれる過酷な環境のもとにあって、生活リズムは崩壊の一途をたどり、綿密な計画は机上の空論と化し、夏バテが肉体的衰弱と学問的退廃に追い打ちをかける」。四畳半に暮らし、京大で学んだ森見氏の実感だろう。日本ではここしばらく、多くの人が同じ炎熱地獄に苦しめられている。京都を含め関東から九州にかけての広い範囲で厳しい暑さが続いているのだ。コロナ禍が収まらない中でのこの暑さ。まさに「生命さえ危ぶまれる過酷な環境」でないか
▼きのうは静岡県浜松市で午後0時10分に、国内最高気温に並ぶ41・1度を観測した。宮崎県児湯では39・7度、長野県飯田で39・5度、くだんの京都も38・4度まで上がった。聞くだけでめまいがする。太平洋高気圧が列島を覆い、たまったままの暖かい空気を強い日差しがさらに熱するというのだから猛烈な暑さにならないわけがない。日本気象協会によると、21日ころまで高気圧の勢力は衰えないそうだ。地域によっては40度を超える日がまだあるらしい
▼本道もきのうは、最も暑い時期を上回る気温が続出した。道産子にはゆるくない。先の物語で主人公の「起死回生の打開策」はクーラーだった。熱中症予防に迷わず活用したい。コップ一杯の水と適度な塩分をこまめに取ることも忘れずに。