現代の若者には全く受けない内容かもしれないが、昭和後期に青春時代を過ごした人には心に染みるものがある歌だろう。1966年にザ・ブロードサイド・フォーが発表した『若者たち』(藤田敏雄作詞、佐藤勝作曲)のことである
▼仲間と声を合わせて歌ったという人も多いに違いない。こんな歌詞だった。「君の行く道は はてしなく遠い だのに なぜ 歯をくいしばり 君は行くのか そんなにしてまで」。あのころは歌詞の「君」を「自分」に置き換え、逆境に負けずにこれからの人生を歩んでみせると意気込んでいたものである。ただし歌っている間だけの話だが。それはそれとして、今なら「君」を安倍晋三首相に置き換えたい気もするがどうだろうか
▼連続在職日数がきのう、2799日に達し、佐藤栄作氏の2798日を抜き憲政史上最長になったという。本来なら、何はともあれお疲れ様とねぎらわれるところだ。ところがこのコロナの流行である。歯を食いしばらねばならない日々が続く。思い起こせばデフレ脱却と前政権で崩れた外交の立て直しから首相の仕事は始まったのだった。途中、根拠の判然としない「モリカケ」問題で延々追求されもしたが、経済と外交では着実に成果を上げてきたように見える
▼最近は体調が少々優れないと聞く。いまだ先が読めないコロナの対策を考えると心労は尽きまい。デフレ、少子高齢化、安全保障、拉致―。課題は山積みである。首相を応援する人も批判する人も今は同じことを考えているのでないか。「君は行くのか そんなにしてまで」。