誰もが知っているおとぎ話の「三匹の子豚」は題名こそかわいいものの、かなり残酷な内容を含む。覚えておられるだろうか
▼親元を離れて暮らすことにした三匹の子豚の兄弟が、それぞれ家を建てることにしたのである。気の短い長男は適当なわらの家、面倒くさがりの次男は簡単な木の家を建てた。ただ、しっかり者の三男だけは安全を重視しレンガの家を建てたのである。そこにやってきたのが悪いオオカミだ。家を息で吹き飛ばされた長男と次男は丸のみにされてしまう。ところがレンガの家は息でも体当たりでも壊れない。三男だけが無事だったのである。大切なものを作るときは間に合わせで済ますのでなく、しっかりと手間暇を掛けるべきと教える
▼どうやら世の中がデジタル化されてもこの教訓の正しさは変わらないらしい。日立化成や全薬工業など国内38社が悪質なハッカーによるサイバー攻撃を受け、テレワークに欠かせないVPN(仮想私設網)のユーザー情報や暗証番号が流出したそうだ。今回は米パルスセキュア社のVPNが狙われた。同社は事前に情報漏えいを招きかねない穴に気づき、修正プログラムを配布。なのに多くの企業は危険なまま使い続けていた。わらの家でも大丈夫と甘く見ていたわけだ
▼幸い各社の基幹情報はレンガの家にあったため被害を免れた。とはいえことし1月の三菱電機のように、やはりVPNを中国系ハッカーに襲われ防衛機密を盗まれた例もある。大事な情報を今もわらの家に置いてある会社は、丸のみにされる前に三男の子豚を見習った方がいい。