マイナポイント

2020年09月02日 09時00分

 ドイツ文学者池内紀氏は晩年、ある病気に悩まされていたという。症状が出ると全身がだるく、気も重くなるんだとか。「おっくう」という病らしい。エッセーにこう記していた

 ▼「医者のカルテにはしるされていないから、医学的には病気ではないのだろう。若い人がかかるケースはごく少ないと思われる。齢とともに疾患率が高まって、老いの到来とともに歴然とあらわれる」。同病の人も少なくないのでないか。確かに相当厄介だ。週末は久々に遠出でもしようかと楽しみにしていたのに、いざ当日になると面倒くさくてやめてしまう。新たな趣味を始めようと気持ちは動くものの、なかなか一歩を踏み出せない。特効薬もなさそうである

 ▼マイナンバーカードを持つ人に最大5000円分のポイントを付与する総務省の「マイナポイント」事業がきのう始まった。ところが事前申し込みは極めて低調なんだそうだ。これも知名度の低さに加えて、「おっくう病」が障害になっていると思うのだがどうだろう。実際に手続きした経験から言うと完了までの道のりは険しい。まずカードの発行を申請し、通知が届くまでに1カ月余り。自治体窓口に受け取りに行き、手にしてからどのキャッシュレスサービスと連携させるか頭を悩ませる

 ▼作業はスマホでできるとはいえ一筋縄ではいかない。エラーばかり出ると途中で投げ出したくなる。これではおっくうになるのも当たり前。普及するには人口の過半数を占める中高年齢層に広げねばならないが、彼らはおっくう病の予備軍である。さて国に妙薬はあるか。


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