人材派遣事業を中心に幅広く人材ビジネスを展開するパソナグループ(東京)が、2023年度末までに本社を淡路島へ移すことにしたそうだ。先週発表した。グループ全体の本部機能社員1800人のうち1200人を異動させるというから本気である
▼「真に豊かな生き方・働き方」を実現するためだが、コロナ禍でリモートワークが進んだことや、新たな事業継続計画(BCP)が求められることも理由らしい。ごみごみした都会を離れ、豊かな自然の中で働けたらどんなに素敵かと思う人は多いに違いない。この感染症も結局のところ、人が過度に集中する大都市問題との側面もある。人口の地方への分散はもっと積極的に考えられていい
▼人材論を専門とするロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授も『コロナ後の世界』(文春新書)でこう指摘していた。「今回のパンデミックを東京一極集中を緩和する契機と捉えるべきではないでしょうか」。ピンチをチャンスに変えろというのである。一極集中の是正は古くて新しい問題だ。つまり言い換えれば、今まで何をしても空振りに終わっていたのである。政府は20年時点で東京圏からの転出者と転入者を均衡させる目標を立てていたが、いまだ12万人規模の転入超過が続く
▼そんな袋小路の中でのコロナ禍である。ウイルスにやられっぱなしでは悔しい。何とか一矢を報いたいもの。それがパソナのような戦略的地方移転なら未来の可能性も広がろう。せっかくだからぜひお薦めしたい潜在力を秘めた土地がある。北海道というんですが。