ジョージ・W・ブッシュ米大統領一期目に国務長官を務めたコリン・パウエル氏は、史上最年少で米国4軍の頂点に上り詰めた人である。誰にでもできることではない。人や組織の力を最大限発揮させられる仕事哲学を持っていたからだろう
▼例えば部下だった二人の指揮官の話。一人は丘を取れと命じると二つ返事で飛び出していく。もう一人は方法や時間、次善の策などをしつこく尋ねてくる。どちらが良いのか。パウエル氏は両方が優れていたと評価する。人は誰でも長所と短所を持つ。その上で「ふたりのいいところを活用し、お互いの強みが弱みを補完し合うようにすることが私の仕事だ」というのである。著書『リーダーを目指す人の心得』(飛鳥新社)に記していた
▼実はこの本、菅義偉新首相も参考にしているそうだ。官房長官時代、学ぶところが多くあったらしい。今回も役立てた部分があるのでないか。菅内閣が16日、発足した。旗印として掲げた基本理念は「国民のために働く内閣」である。顔ぶれを眺めると、20人の閣僚のうち再任と横滑り、再起用で15人を占める。初入閣は5人だけだ。難しい時期を乗り切るための即時対応内閣といった趣である。新味に乏しいとはいえ行政改革に実行力ある河野太郎氏、デジタル改革にITに詳しい平井卓也氏を持ってきたところなどは、菅首相の改革にかける熱意の表れだろう
▼さて、内閣の形は出来上がった。ここからそれぞれの閣僚のいいところを活用し、強みが弱みを補完するように導くのが菅首相の仕事だろう。お手並みを拝見したい。