男の数え42歳は大厄といわれ、古くから凶事や災難に遭いやすいとされてきた。真偽は定かでないが、社会的な立場や責任、身体的な衰えといった変化が顕著に現れるころだからとの説をよく聞く
▼ただ体に関しては近年、健康寿命が延びたこともあり、50歳を新たな厄とみなす考えも出てきているらしい。なるほどそうかもしれないと納得する人も多いのでないか。今の時代、42歳といえばまだ気持ちは若者だろう。ところが50歳の坂を越えるとそうはいかない。独自の身体論でも知られる斉藤孝明治大文学部教授もエッセーに、「50歳というのは、思っている以上に節目の年齢だ。実際に迎えてみてわかった」と記していた。無理が利かなくなってくるというのである
▼だとすると、この人の体は一体どうなっているのか。サッカー元日本代表FWのJリーガー「キング・カズ」こと三浦知良(横浜FC)が、先週23日の対川崎フロンターレ戦に53歳6カ月で先発出場し、J1最年長出場記録を打ち立てたのだ。スポーツニュースでプレー映像を見たが、赤いキャプテンマークを左腕に巻いて走る走る。ゴールこそ決められなかったものの、好機を見逃さず絶妙のパスを出し、得点にあと一歩まで迫った
▼普段から厳しいトレーニングを欠かさず、体重もグラム単位で管理していると以前何かで読んだ。確かに、「レジェンド」というだけで試合に出られるほど甘い世界ではあるまい。とはいえキング・カズも50歳を超えた一人の男。その彼が次々と常識を覆していく姿を見ると、厄も落ちる気がして心強い。