池江選手がインカレで4位

2020年10月05日 09時00分

 小説家の佐藤愛子さんは、師からもらったあるひと言で人生が変わったそうだ。エッセー「師の訓え」に記していた

 ▼38歳の時である。楽しみにしていた同窓会の2日前に、夫の会社が多額の負債を抱えて倒産した。「気持ちも体もヘナヘナ」になって出席は断るつもりだったが、たまたま会った師に話すと、こう促されたという。「いっそ苦しいことの中に座りこんでそれを受け止める、その方がらくなんですよ」。背中を押されて佐藤さんは出席。友人に現状も話した。するとどうだろう。「元気が出てきた。私はここへ来る力があったということが、多分自信になったのだと思う」。困難にあえて飛び込むことはときに自分の中に眠っていた力を引き出す

 ▼人生経験豊富な佐藤さんのような人ならともかく、まだ20歳のこの若者は一体どこでそれを学んだのか。白血病の闘病を終え実戦復帰した日大2年の池江璃花子選手が1日、日本学生選手権(インカレ)の女子50㍍自由形に出場し、決勝で4位に入った。治療後1年しかたっていない。8月29日の復帰初戦東京都特別大会では体の細さが目立った。全盛期を覚えている人は皆、痛々しく感じたはずである。なのにインカレではかなりたくましさが戻っていた。生半可な鍛錬でできることではあるまい

 ▼彼女は復帰後のことを、「第二の水泳人生」と呼んでいるそうだ。ゼロからやり直す覚悟の表れでないか。やはり苦しいことの中に座りこんでそれを受け止め、自信に変えていく人なのだろう。しんどい「らく」を選んだ池江選手にエールを送りたい。


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