いくら着飾っても中身まで変わるわけではない。下手に見栄を張るとたいていは後で痛い目を見る。イソップ寓話(ぐうわ)にそれを教える一話があった
▼「王様になりたかったカラス」である。神様が全ての鳥に「最も美しい鳥を王にする」とお触れを出す。このままでは望みがないと考えたカラスは他の鳥の羽を身に付け、虹色の鳥として神様の前に進み出た。信じた神様は喜んでカラスを王にしようとするが…。結末はご存じだろう。不正に気付いた他の鳥たちが羽を取り返し、カラスは元通りの真っ黒い姿に戻るのである。証拠偽造と虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで12日に逮捕された道警交通機動隊の警部補も、自分の醜い姿がいずれ明るみに出ることなど容易に想像できたろうに
▼パトカーで違反車両の取り締まりをしていたこの警部補はパトカーのレーザー式速度計測装置でうその速度記録をでっち上げ、反則切符を渡していたという。どうやら実績を上げて警察内部で認められたかったらしい。正式な取り締まりは停止したパトカーから対象車両にレーザーを照射して速度を測る。ところが容疑者はパトカーを走らせた状態でレーザーを電柱などに当て、違反したように見せかけていたという
▼仕組みを熟知した上で悪用していたのだから弁解の余地はない。被害を受けた人は少なくとも47人に上るそうだ。腹立たしい事件である。ただ、最も怒りを感じているのは日々真面目に職務を遂行している警察官たちだろう。着飾ることもなく、与えられた自らの羽を磨く人がほとんどなのである。