つい先日、仙台の友人に車で名所旧跡を案内してもらっていた時のことである。小さな商店街で前を走る路線バスが停車したため、こちらも後ろで待っていた。追い越せるほど通りは広くない
▼すると中年男性が目の前を小走りに横断しだした。対面方向からは車が来ている。突然の出来事ゆえ当方もなすすべがない。バスの陰から飛び出す形になった男性をかすめるようにして対面の車は走り去った。息が詰まった。もう1秒違えば重大事故は免れなかったろう。横断歩道があるわけでもない。あの車は飛び出した男性を避けられなかったはず。不可抗力である。それを思い出したのは死亡交通事故の裁判で加害者とされた被告のA氏に無罪判決が出たからだ
▼事故は昨年4月、東京都渋谷区で起こった。A氏は信号機のない交差点を右折するため手前で一時停止し、徐行しながら進み、再び停止した。右から走ってきたオートバイがそれに驚いて転倒。投げ出された人がA氏の車にぶつかって死亡したのである。A氏は街路樹で視界が遮られるため左右が見える所まで慎重に出た。時速75㌔で走っていたオートバイは気付くのが遅れたらしい。東京地裁は14日、「注意していても回避できたか疑問」と判断したそうだ。やはり不可抗力でないか
▼この場合、事故の誘因が街路樹にあったことは疑問の余地がない。実は仙台の現場も緩やかに盛り上がった道の頂点で、先の見通しが悪かった。人が注意すべきは当然だが、道路環境が事故を招く例も多い。一人一人が危険箇所を知り、賢く事故を避けたいものだ。