知ったかぶりは自らを窮地に追い込むことがある。苦い経験を持つ人も少なくないのでないか。落語「酢豆腐」に登場する若旦那もその一人だ
▼日頃から何でも知っていると自慢してばかりの若旦那を試してやろうと、長屋の職人たちが一計を案ずる。腐った豆腐を舶来の珍味と偽って差し出したのである。職人が言う。「珍しい物らしいが舌が肥えてない俺たちにはもったいない。若旦那なら味が分かるでしょう」。若旦那が顔を寄せると、臭いがツンときて目にも染みる。知らない物とは言いたくない。苦し紛れに「酢豆腐だな」。引っ込みがつかないまま食べはじめ、目を白黒。こちらの人の言動もはたから見るとそれと一緒だが、やはり本人は一向に気にしていない様子なのが面白い
▼立憲民主党の原口一博議員が19日に開いた野党合同ヒアリングの話である。民間から政府の「GoTo」事務局に出向している職員の日当が高過ぎると息巻いているのだが、どうやら日当と手取りの違いが分かっていない。業務委託費で日当4万円と積算されていても社会保険などが引かれると手取りはその7―8割。妥当な額である。原口氏の発言を聞くと会社の給与に加え4万円ももらえると勘違いしているようだ。しかも丁寧に説明する女性官僚に、「あなたはコミュニケーションが難しい方だ」と暴言を放つ始末
▼原口氏はこの一部始終を「ユーチューブ」に公開している。国の不正を白日の下にさらしたと鼻高々だが知ったかぶりも度を超すと笑い話では済まされない。党に向けられる目も一層厳しくなろう。