厳しい環境下で平井建設工業が施工
大雪山国立公園内にある白雲岳避難小屋の建て替えが、このほど完了した。環境省としては初めて、短い工期で高強度の建築物が施工できるCLT(直交集成材)を全面的に活用した。現場は標高2000m。工事は平井建設工業(本社・当麻)が受注し、厳しい自然環境下の作業で竣工までこぎ着けた。

完成した避難小屋と資材を運ぶヘリコプター(平井建設工業提供)
上川町内に位置する白雲岳避難小屋の規模はW造、2階、延べ98m²。旧施設は築40年以上が経過し、老朽化が進んでいたため7月上旬―9月末の工期で建て替えた。環境省北海道地方環境事務所が発注し、実施設計はアジア航測が担当した。
施設は全面的にCLTを活用し、外壁には太陽光パネルを設置した。登山口から避難小屋は徒歩で片道約4時間かかる地点。環境省が示した登山の難易度を5段階で示す大雪山グレードによると、同避難小屋付近はグレード4から5。厳しい自然環境における休憩地点となる。
平井建設工業の平井健一郎社長は「普通の建築工事よりも気を付けることは多くあった」と話す。登山口から現場までは歩いて移動するため、登山中の滑落、転落事故には細心の注意を払った。資材はヘリコプターで運搬。同社は荷造りを進め、ヘリコプターの操縦は中日本航空が担った。「天候が悪いと飛行はできない。飛行日程に合わせた工程管理を立てるのが難しかった」と振り返る。
現場に着いても気は抜けず、強風が吹き荒れる悪天候の中で施工した。国立公園内の植物を傷付けないよう、専門家の指示を仰ぎながら避難小屋周辺の植物を移動。山間部で活躍するクレーンを使い、CLTパネルを組み立てていった。
旧避難小屋の建設も同社が担当した。平井社長は「父の代から避難小屋の建設に携われて光栄」と話している。環境省大雪山国立公園管理事務所の桝厚生所長は「安全に登山をするための適切な情報提供をする施設にしたい。マナーを守り、大切に使ってほしい」と呼び掛けている。ことしの大雪山の登山シーズンは過ぎたため、供用開始は来年夏からとしている。(旭川)
(北海道建設新聞2020年10月28日付10面より)