室蘭開建が進める樽前山火山砂防事業の2021年度以降残事業費は、123億円となる見通しだ。これまでに遊砂地、砂防堰堤10施設、流木捕捉1施設が完成し、現在は砂防堰堤2基を建設中。今後施工する施設についても検討を進めていて、有事における周辺地域の防災力向上を目的とした整備を継続する。
樽前山は、約4万年前の支笏火山噴火後に誕生した活火山で、1667年と1739年に大規模噴火が発生し、大量の火砕物を噴出。19世紀以降には70回以上の噴火が記録されていて、20世紀に入ってからも小規模噴火を繰り返している。
山麓には苫小牧市、白老町の市街地などがあるほか、国道36号、道央自動車道、JR室蘭本線といった交通網が形成されている。物流拠点を見ても新千歳空港、苫小牧港といった重要施設が立地。ひとたび噴火となれば住民生活、地域経済ひいては全国の社会経済にも甚大な影響を与える恐れがある。
このため、94年度から直轄により事業着手。灰と雨が一緒になって流下する降雨型火山泥流、冬季に山へ降り積もった雪が噴火で溶け、土砂や火山灰とともに流れ出る融雪型火山泥流をせき止めるための各施設を順次建設している。総事業費は201億円。
これまでの進捗を見ると、19年度末時点で降雨型火山泥流は整備対象土砂量297万4000m³のうち約270万m³、融雪型火山泥流は3214万m³のうち約580万m³の土砂量が整備済み。
現在建設中の施設は、熊の沢川2号砂防堰堤と覚生川3号砂防堰堤の2基で、20年度はこれら砂防堰堤の建設工事3件、流木捕捉工事の1件を発注。21年度以降も両堰堤の施工を継続する方針だ。
このほか、熊の沢川3号砂防堰堤の詳細設計が完了。規模は同川2号堰堤と同程度で、2号堰堤の上流側に整備する見込み。
現在の樽前山は一部の火口、噴気孔群、亀裂で高温の状態が続き、注意が必要な状況にある。同開建は、現時点の整備率では火山噴火による土砂災害の発生率が高い状態にあると分析。本道の生活と社会基盤を守るため、さらなる事業促進が望まれる。
(北海道建設新聞2020年10月30日付13面より、WEB掲載にあたり一部を抜粋)
北海道建設新聞2020年10月29日付12面では、堰堤・遊砂地施設の構造、延長、高さ、完成年度を、箇所付けで掲載しています。
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