親が何でもしてあげると、依存心が膨らんで何一つできない子どもになる。よく知られた子育ての失敗だろう
▼古いテレビドラマを持ち出して恐縮だが、平成初期の『ずっとあなたが好きだった』(TBS)に登場する「冬彦さん」がちょうどそんな男だった。佐野史郎さんの怪演を覚えている人も多いのでないか。溺愛する母親に育てられた結果、何も決められず、常に母親に頼る大人に成長してしまったのである。親の心が愛情の内はまだいい。ただ支配欲が強くなると厄介だ。子どもが意に沿わないことをすると、親は見放すような態度を取る。依存心に凝り固まった子どもにはこれが最大の脅しで、反抗心もすぐにしぼむらしい
▼中国がそんな迷惑な親の手法を取り入れようとしている。各国に日頃から部品や物資を過剰なほど好条件で提供し、それなしではサプライチェーン(供給網)が回らない状態にしておく。その上で、中国に対し経済制裁の動きに出ようものなら提供中止をちらつかせて脅すのだ。経済面で国際社会の中国依存度が高まるよう画策し、中国に歯向かえなくする戦略である。習近平国家主席が4月の会議で指示したそうだ。共産党理論誌「求是」が10月31日、ホームページに掲載した会議録で明らかになったという。時事通信が伝えていた
▼かつて欧米列強が使い、第2次世界大戦の呼び水にもなった戦略と同じである。長い目で見て国の信頼を高めることにはならない。有無を言わさぬ支配に耐えかねた「冬彦さん」も、最後は母親を刺してしまった。独善の行き着く先は暗い。