IT人材の確保しやすさ要因
道内のサテライトオフィス誘致が好調だ。2019年度末までに道内74カ所で開設。都道府県別では前年度末まで同数だった徳島県を引き離して単独トップとなった。IT関連の人材確保のしやすさや冷涼な気候、オフィス賃料の低さが要因とみられる。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにより注目が高まっていることを踏まえ、道はサテライトオフィス開設を地域の雇用創出や活性化につなげるため、さらなる誘致を進める考えだ。
総務省の調査によると、地方公共団体が関与したサテライトオフィスの開設は19年度までに全国で654カ所に上った。調査に回答した223社のうちオフィス形態が独自事務所なのは71%、シェアオフィスは26%、入居形態は常駐型は73%、循環型は25%だった。常駐社員数は1―5人が69%で最も多く、6―10人が12%、11人以上が14%と小規模オフィスが多かった。
道内は首都圏と比べ、IT分野の有効求人倍率が低く人材を確保しやすいことや冷涼な気候、オフィス賃料の低さなどから誘致につながっている。また、サテライトオフィスやテレワーク拠点が道内36市町村にあることも強みとなっている。
市町村別の開設状況を見ると、札幌市が48カ所で最多。次いで更別村が10カ所、旭川市が7カ所、北見市が4カ所、室蘭市と福島町、ニセコ町、長沼町、下川町がそれぞれ1カ所だった。
ドローンを活用した農業支援に取り組むためNTTドコモ(東京)が更別村に開設。ジモティー(同)が北見市のサテライトオフィスを活用し、市や大学との共同事業・研究に取り組むなど、地域との連携や交流による地域活性化にもつながっている。
道経済部産業振興課の担当者は、新型コロナの感染拡大後、市町村からの問い合わせが増えたのに加え、展示会で好感触を得るなど「注目が高まっていると感じる」と話す。サテライトオフィス開設を地域の雇用創出や活性化につなげるため、支援の強化を検討している。
また、総務省は21年度地方税制改正で、サテライトオフィスを整備する企業を対象に法人税などの軽減措置創設を求めている。オフィス整備にかかった設備投資に対し、法人税の税額控除や固定資産税の軽減といった特例措置を設ける考え。実現すればサテライトオフィス開設の後押しとなり、道内へのさらなる誘致も期待される。
新型コロナの感染拡大により働き方は大きく変わった。変化に対応するオフィスの開設を地域活性化につなげるための方策が必要となっている。
(北海道建設新聞2020年11月2日付1面より)