トランプ対バイデン

2020年11月10日 09時00分

 史上最年少で王位と棋聖の二冠を獲得した藤井聡太八段の活躍を見ていて覚えた将棋の作法がある。愛好家には常識なのだろうが、ほとんどの人は知らないのでないか。将棋では手詰まりになった方が、「負けました」と宣言することで対局が終わるというのである

 ▼どこからどう見ても相手に勝ち目はなくなったと分かっていても、優勢な方が「はい、僕の勝ち」と自己判断で対局をやめることは許されないそうだ。敗者が自ら潔く負けを認めることで気持ちに区切りを付け、次への学びに変えていく。一対一の勝負に正々堂々臨む棋士のプライドを感じさせられる作法である

 ▼米大統領選にもよく似た作法があるらしい。負けた候補者が先に敗北宣言を出し、それを受けて勝者が名乗りを上げるという伝統である。選挙戦で生じた遺恨や分断をいったん脇に置き、国民が再び一つの目標の下に結集できるようにするための知恵なのだとか。見ていると、どうやらトランプ大統領はこの伝統を守る気がないようだ。全米投票では8日までに、民主党候補ジョー・バイデン前副大統領が選挙人の過半数を獲得し、当選を確実にした。菅首相をはじめ各国首脳も次々とバイデン氏に祝辞を贈っているが、トランプ氏は盤を見つめたまま動かない

 ▼バイデン陣営が不正をしたと主張し、選挙制度の穴や法廷闘争などあらゆる手段を使って王手を狙う構えだ。ただ、これもまた米国流民主主義。最終的にどちらが勝つにせよ、分断が取り返しのつかないところへ行く前に、敗者から「負けました」のひと言が出るといい。


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