伝統建築工匠の技

2020年11月19日 09時00分

 三重塔や五重塔に代表される多重塔はかつて、100m近い高さのものまであったという。現存する木塔のうち最も高いのは東寺(京都)の五重塔で54・8m。一度行ったことがあるが、近くで見てその高さに圧倒された。天に昇るかのような姿が美しい

 ▼ただ基壇の面積の割に高さがかなりあるため、地震や嵐で倒れたりしないか少し気になった。ところが木塔が地震で倒壊した例は史上皆無といわれているそうだ。幸田露伴の小説『五重塔』にも、暴風雨に襲われ江戸の家屋が大きな被害を受けたのに、出来たばかりの五重塔は「釘一本ゆるまず板一枚剥がれざりし」という場面があった。それだけ卓越した技術が使われていたのである

 ▼法隆寺金堂の修復で知られる宮大工西岡常一さんの言葉を思い出す。「こうした木ですから、この寿命をまっとうするだけ生かすのが大工の役目ですわ」「そのためには木をよくよく知らなならん。使い方を知らな」(『木のいのち木のこころ〈天・地・人〉』新潮文庫)。これからも末永く残していくべき伝統だろう。その追い風となるに違いない。日本の木造建築を受け継ぐ職人の技術を網羅した「伝統建築工匠の技」が、ユネスコ無形文化遺産に登録されることが確実になった

 ▼構成技術は修理や木工、かやぶき、彩色、漆塗り、左官、建具など17分野に及ぶ。先細りが懸念される伝承者の養成に弾みが付くのは確実だ。修理サイクルを見越して材料の育成から取り組む日本の木造技術は世界でもまれ。持続可能性が叫ばれる今の世に再び一石を投じるのでないか。


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