児童虐待増加

2020年11月24日 09時00分

 ロシアの文豪トルストイに、青年将校との恋に溺れた人妻の数奇な運命をたどりながら、人間の業の深さや道徳、思想、宗教を描き尽くした大作『アンナ・カレーニナ』(光文社文庫)がある。世界中で長く読み継がれている名編だろう

 ▼トルストイは物語をこんな一文で始めている。「幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」。印象的だがやや不穏な雰囲気も漂う。2019年度の児童虐待件数が前年度より約3万4000件増え、19万3780件に上ったそうだ。増加率は実に2割以上である。厚生労働省が先週、全国の児童相談所で対応した件数を発表した。閉ざされた家の中で、「それぞれの不幸の形」に苦しむ子どもたちがこんなにたくさんいることに驚く

 ▼虐待で亡くなる痛ましい事件が相次いだため、学校や警察も積極的に関わるようになったのが通告が増えた理由らしい。つまりこれまでもあったわけで、家の中のことゆえ隠されていたのである。最も多かったのは暴言を吐いたり子どもの前で家族に暴力を振るったりする「心理的虐待」で全体の56.3%。殴るなど暴行を加える「身体的虐待」の25%、「育児放棄」の17%がこれに続く

 ▼心配なのはコロナ禍で虐待がさらに増えたことだ。通告は昨年を上回るペースという。外出自粛や収入減でストレスを抱えた親が子どもをはけ口にする例が目立つのだとか。学校や警察の目も届きにくい状況のため、問題が潜在化する懸念もあるようだ。不幸の形をこれ以上増やしてくれるな、コロナよ。


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