米軍には目的を明確に定め決定的な戦力で最短の勝利を目指す「パウエル・ドクトリン」の原則があるそうだ。それを実行していたコリン・パウエル元統合参謀本部議長の名が冠された
▼作戦遂行の基本は〝熟慮の上で〟だそうだが奇襲など突発的事態の場合は変わるらしい。「決定的であろうがなかろうが、政治目的がはっきりしていようがいまいが、世論の支持があろうがなかろうが、行動しなければならない」。自著『リーダーを目指す人の心得』(飛鳥新社)でパウエル氏が説いていた。同書を愛読する菅首相はこの一節を今、あらためてかみしめているかもしれない。新型コロナウイルスの第3波に襲われ、難しいかじ取りを迫られている
▼ここまでは高い支持率を背景に、縦割り行政の改善やデジタル化の推進に一定の成果を上げてきた。長らく温めてきた政策を実行に移す攻めの展開ができたからだろう。たっぷり時間をかけて準備してきた技を披露したようなものだ。いわば勝って当然の戦である。そこに第3波の奇襲を受けた。守りながら有効な手も打つのでなければ負けは確実。先が読めない上に持ち手も少ない。ここをどう乗り切るかで、安倍氏の七光りでないリーダーとしての菅首相の本当の力量が測られよう
▼最近の様子を見る限りそれはあまり芳しくない。こと感染対策に関しては顔が見えないのだ。縦割りの弊害を訴えていたころの意気込みはどこへ行ってしまったのか。今は「世論の支持があろうがなかろうが、行動しなければならない」ときである。菅首相が前面に立たねば。