本道で一般向けの電気事業が始まったのは、ちょうど130年前の1891(明治24)年だった
▼北電の「北海道の電気ことはじめ」によると、札幌の実業家が興した会社が札幌市大通西3に25㌔㍗直流発電機2台を設置し、道庁や今井呉服店(丸井今井)など30件の電灯をともしたそうだ。開業当日は世にも珍しい電気の光なるものをひと目見ようと、多くの人が付近に集まったらしい。きっと度肝を抜かれたろう。電気は本道に新たな時代の幕開けを告げるものだった。以来、電気は常に人々と共にいて、豊かな暮らしを支えてきたのである。ただ、2018年の胆振東部地震による全道ブラックアウトでその信頼にひびが入った。システムは知らぬ間に盤石ではなくなっていたのだ
▼電気に限らない。このところ本道発展の主役を演じてきた産業やインフラの苦境が目立つ。JRは赤字幅を広げ、路線の縮小や廃止、駅の削減を余儀なくされている。漁業は不振にあえぎ、農業はTPPにおびえる状況が続く。大切に育て、基幹産業に成長した観光も新型コロナウイルスで惨憺(さんたん)たるありさま。「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢつと手を見る」。石川啄木の悲しい歌がふと頭をよぎる
▼とはいえここで諦めては開拓者の末裔(まつえい)の名がすたるというもの。暗闇の中を手探りで進むしかなかった20年は終わり、目の前には切り開かれるのを待つまっさらな年が広がっている。ここは心機一転。コロナに耐え、強い意志と鮮烈なアイデアで本道に新たな明かりをともしたい。