空き家、タダでお譲りします マッチングサイトに注目

2021年01月08日 10時00分

対策の選択肢広がる

 空き家対策の新たな選択肢として、無償譲渡が注目されている。売れない空き家を無償でもいいから譲りたい人と、安く不動産を取得したい人をつなげるためだ。無償譲渡を希望する物件のみを対象に、土地・建物の情報を掲載しているマッチング支援サイト「みんなの0円物件」が、無償譲渡のニーズを次々と掘り起こしている。(旭川支社・千葉 有羽太記者)

各地の空き家で無償譲渡のニーズを探る中村氏(右)

 札幌市の経営コンサルタント、中村領氏(43)が運営しており、2019年7月のサービス開始以降、全国140物件を扱い、このうち8割以上が成約に至った。

 同サイトは掲載無料。交渉手続きなどを任せる場合は15万円の依頼料が発生するが、全てを所有者自身が進める場合は費用が発生しない。

 掲載しているのは、空き家・空き地、空き店舗などさまざま。中村氏によると成約事例の一つとして、空き家の解体費用を支出できない所有者がサイトに掲載し、地元工務店とマッチング。譲渡後、解体の上、再活用されることになった事例がある。

 サイト設立は、中村氏自身の経験がきっかけだ。18年に父親が死去し、旭川市内の物件を相続。解体費用などが土地の売却価格を上回り処分に困ったが、物件を活用して飲食店を開業したい人に出会い、無償で譲渡した。

 無償譲渡のニーズは他にもあると考え、ウェブサイトを開設。運営会社として「0円都市開発合同会社」を旭川市内に設立し、代表社員として活動を始めた。

 経営コンサルタントの仕事の中で「一つの会社の経営を立ち直そうとしても街全体の活気が落ちていればうまくいかない」と感じていたこともあり、まちづくりとして、空き家対策事業がコンサル事業と「つながる部分があるかもしれない」との思いを抱いた。

 サービスが広まった経緯を中村氏は「0円の物件という驚きなどで注目されたのでは」と語り、「ボロボロの空き家でも欲しい人がいる。付加価値を付けなければ売れないという先入観を取り除き、空き家の流通のハードルを下げたい」と抱負を述べる。

 ただ「物件の譲渡後、土地を押さえただけで空き家を放置していたケースが1度あった。そのような経験から契約前に、用途や活用するまでの期限を確認して譲渡を進めるようにしている」とし、「空き家対策にならなければ意味がない」と経験を糧に事業を軌道に乗せている。

 20年度は、国の空き家対策モデル事業に同社の無償譲渡に関する取り組みが採択され、全国6カ所で説明会を開催。地域の空き家を訪問し、無償譲渡のニーズを探るとともに、地元の不動産業者などに活動を周知した。

 今後については、「このサイトをデータベースとしたい。サイト上には、成約済みの物件も、中止となった物件も全て掲載している。0円で譲渡したい物件がこれだけあり、その中で0円なのに売れない物件がある。問題提起になれば」と展望する。

 譲渡が進まない空き家は、「建築基準法などの問題がある」と分析し、「古くに建てられた物件で、接道義務を満たしていないなど、現行の建築基準法に合致していない物件がある」と実情を吐露する。法律など「仕組みを作る人に、このサイトを参考にしてもらいたい」と期待している。

(北海道建設新聞2021年1月7日付1面より)


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