人類の歴史の中で、文明の象徴ともいえる都市が生まれ、今につながる建築が姿を現したのは紀元前5000年頃とされている。現在のイラクを中心とする古代メソポタミアでのことだ。当時の主な建築材料は日干しれんがだった
▼一方で土木はどうか。起源の特定は難しいが、勢力範囲内を縦横につなぐローマ街道を挙げるのも一つの答えだろう。大石で舗装した総延長15万㌔の道である。紀元前300年頃の話だ。以来、世界中で多くの建築物や土木施設が造られてきた。建築なら住宅や神殿、教会、城郭、土木なら港湾やダム、橋梁、堤防など。人類の歴史はそういった構造物の整備と累積の歴史といってもいい。材料も土かられんが、木材、コンクリートと耐久性の高い素材に変わってきた
▼そんな地球上にある人工物の総重量が昨年末までに1兆1000億㌧に達し、生物の総重量を上回った可能性があるという。イスラエルのワイツマン科学研究所のチームが先頃、英科学誌「ネイチャー」に発表した。人工物とは文字通り人間が作り出した物を指す。ペットボトルや衣服も含まれるが、大部分を占めるのは建築物や土木施設を構成するコンクリートや砂利だそう
▼1900年代初めには350億㌧で生物の3%にすぎなかったのに、それからわずか120年で逆転である。今では年間300億㌧ずつ増えているらしい。地球の重さが変わるわけではないものの、物質文明が大きな曲がり角に来ていることを感じさせる数字ではあろう。あまり急ぎすぎると人間は痛いしっぺ返しを食うかもしれない。